「同じように育てたつもりでも兄弟で性格がまったく違うのはなんで?」
「子どもの考えていることが理解できない。」
「子どもに怒っても、まったく響かない…。」
このような経験はありませんか。
子育ての悩みには子どもの「気質(きしつ)」が大きく関わっています。
気質とは個性や性格をつくりあげる土台のようなもので、
子どもの気持ちを汲み取るためには気質の理解が大切です。
本記事では気質の特徴と関わり方について紹介しています。
子どもの気持ちや言動を理解する手助けとなり、子育てが幾分か楽に、そして愉しくなるはずです。
気質ってなに?4つのエレメントと個性の関係
ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーは「シュタイナー教育」を提唱しました。
シュタイナー教育では、気質をもとに子ども一人ひとりの個性を認め、伸ばしていきます。
こうした考えは、教育現場だけでなく親子関係を築く上でも大切です。
それでは、気質と個性の特徴について見ていきましょう。
4つの気質の特徴
一般的に「気質(きしつ)」とは、人間が生まれつき持ち合わせている行動や意欲の傾向を表します。
気質は4つに分類されます。
「性格」と混同されやすいのですが、「性格」や「個性」は気質を土台として形成されていくと考えられています。
気質は赤ちゃんの頃から現れ、4〜5歳くらいに特に出やすいといわれています。
胆汁質 火のエレメント
- 積極性、行動力がある
- 怒りっぽい、かんしゃくを起こす
- 意志が強く、自分が決めたことを曲げない
- エネルギッシュでたくましく、力強い
- 自分のペースや周りの調和を乱されるのが嫌い
- 体を動かすことや力仕事が好き
- 赤ちゃんの頃は人一倍力強く泣き、あやすのが大変だった
- 睡眠時間が短く、早起き
多血質 エレメントは風・空気
- 明るく愛嬌がある
- 人見知りをせず、誰とでも仲良くなれる
- 何にでも興味をもつが、飽きやすい
- 集中力が長続きしない
- 優柔不断で1つに選べない
- 迷子になりやすい
- 友達と遊ぶことが大好き
- 赤ちゃんの頃は、人見知りがなく好奇心旺盛で色々なものに興味をもつ
粘液質 エレメントは水
- ゆっくり、おっとりしている
- 1人遊びが好き
- 自分の好きな物や行動は毎日続けることができる
- 食べること、眠ることが好き
- 周りへの関心が乏しい
- 全体的にぽてっとした体型の子が多い
- 自己主張が少なく、周りの子に従うことが多い
- 赤ちゃんの頃からよく食べ、よく眠り、育てやすい
ゆううつ質 エレメントは地
- 新しい環境やものが苦手で常に心配ごとがある
- 恥ずかしがりやで引っ込み思案
- 人見知りが激しい
- 感覚・感受性が鋭い
- 家など自分の安全が保てる場所が大好き
- 想像力が豊かで芸術的才能がある
- 赤ちゃんの頃は音や光の刺激、おむつの不快感などでよく泣いた
【その1】人間は4つの気質をすべてて持っている
シュタイナーは「誰もが4つの気質すべてを持っている」といっています。
すべての要素を持ち合わせたうえで、人によって強く現れる気質が異なるという考え方です。
そのため、気質のタイプをどれか1つに断定することは難しく、複数の要素に当てはまることが多いです。
血液型診断のように4つ気質のどれか1つに当てはまるわけではありません。
【その2】隣合った気質は一緒に出やすい
人間はすべての気質を持ち合わせていますが、2つ以上の気質をあわせ持って「個性」として現れることが多いです。
この場合図のように、隣り合った気質は同時に出やすい傾向があります。
胆汁質(火)× 多血質(風)
好奇心旺盛で行動力もあるが、飽き性
多血質(風)× 粘液質(水)
ほがらかでのんびり
粘液質(水)× ゆううつ質(地)
いつもは穏やかだが、一度考えだすと切り替えができない
ゆううつ質(地)× 胆汁質(火)
怒りを爆発させず、内側にためこむ
心配性で行動に踏み出せないが、一度決めたら最後までやり抜く
【その3】反対にある気質は出にくい
一方で反対位置にある気質は、同時には出にくいと言われています。
この場合は、「友達といるときは多血質で家で一人で過ごすときはゆううつ質」のように時間差で現れることがあります。
多血質(風)とゆううつ質(地)
好奇心旺盛で友達も多いが、
家に帰るとあまり喋らない
胆汁質(火)と粘液質(水)
調和を身だされるのは嫌いだが、
食べるとき寝るときはマイペースを貫く
「育てづらさ」は気質の違いから?
親と子どもが同じ気質であれば、気持ちも理解しやすく育てやすい子だと感じます。
しかし、親子が反対の気質であると気持ちがわからなかったり、育て方に戸惑うこともあるかもしれません。
このような場合は、気質別の特徴を捉えると、関わり方の糸口につながります。
【あなたの子どもの気質は?】気質タイプ別の関わり方
子どもが自分らしく生きていくためには、気質の調和が取れるように伸ばしてあげることが大切です。
気質ごとの関わり方・伸ばし方について、もう少し詳しく見ていきましょう
火のエレメント(胆汁質)
頑固だけど、やり遂げる力は誰よりも強い
火気質の子どもは、意志が強く一度決めたことは曲げない頑固な一面があります。
粘り強くやり遂げる力があるというのは、立派な長所です。
日常の遊びの中でもゴールを明確に設定するなどして達成する喜びを感じさせてあげてください。
達成感は子どもの自己肯定感を伸ばし、大きく成長させます。
火気質の子は、自分の意思が強く行動力があるので、エネルギーを上手にコントロールできれば素晴らしいリーダーになります。
エネルギーの発散=かんしゃく
火気質の子はエネルギーが強く、暴れることで発散しようとします。
かんしゃくもその手段の一つです。
カッと頭にきて暴れたり、叫んだりすることもありますが、時間がたてば必ず冷静さを取り戻します。
かんしゃくを起こしているときは、場所を替えて落ち着くのを待ちましょう。
こちらも対抗して言い返したり抑制しようとすると、ますますヒートアップして手がつけられなくなります。
大抵の場合は、子どもは暴れたときのことを詳しく覚えていません。
冷静になったタイミングで、「なぜかんしゃくを起こしてしまったのか」「暴れたときの行動はどうだったか」について一緒に話し合ってみてください。
エネルギーの発散は、体を動かしたり力仕事をすることでも可能です。
火の気質という文字通り燃えたぎるエネルギーを自分でも制御できないのがこの気質の特徴。
普段から体を動かす遊び、力を使う遊びなどエネルギーを発散する機会を取り入れることが大切です。
火気質(胆汁質)の子は尊敬できる存在がいることで成長
火気質の子どもは、尊敬できる存在がいることで成長できます。
子ども自身ができないことや難しい課題を軽々とこなしたり、目標に向かって最後までやり遂げる姿を見せたりすることで信頼できる存在と認識されます。
尊敬する存在ができると、火気質の子はそこに向かってみずから学ぶようになります。
家族の間でも「お父さんは力仕事もなんでもできるね。」「お母さんのご飯はいつも美味しいね。」などとお互いを尊重する姿勢を見せると、家庭が心地よい環境になっていくでしょう。
風のエレメント(多血質)
風のエレメント(多血質)の子どもには飽きさせない工夫を
風のエレメントの要素をつよくもつ子は、好奇心旺盛でいろいろなものに興味をもちます。
しかし、興味は長続きしません。次から次へと興味が移ってしまうため何かに取り組ませるときは、飽きさせない工夫が必要です。
例えば絵本の読み聞かせをするとき、風の気質がつよい子たちは、読み始めは興味津々でも、すぐに目移りして他の絵本やおもちゃに気がとられてしまいます。
そのようなときは、絵本をしっかりと見せて「このページには何が見える?この人は何をしているのかな?」と、深掘りし、新しい発見を得る楽しみを感じてもらいます。
次第に自分から、興味のあるものを見つけ、集中力が長続きするようになります。
絵本だけでなく、散歩やドライブ中の会話でも関心事を深掘りする声かけを心掛けてみてください。
また、風気質の子は新しいおもちゃが大好きですが、一つのおもちゃで長く遊び続けることができません。
そのため、飽きてきたと感じたところで、遊んでいたおもちゃを隠しておきます。
そして、数日後にまた同じおもちゃを出してあげてください。
きっとまたキラキラした目で遊び始めるはずです。
スプーンやフォークやお皿・プレートなども、何種類か準備して毎回食器を替えて出すと、ワクワクしてご飯をたくさん食べてくれるようになります。
役割をもたせて「責任感」を養いましょう
好奇心旺盛ですが、飽き性で続かないのが風気質の特徴。
しかし、子どもを観察していると、継続して興味を示すものがいくつかあるはずです。
その興味を継続できるような関わりをしましょう。
例えば生き物に関心がある場合は、魚を一緒に飼育し毎日の餌やりや水槽の掃除などのお世話を子どもの担当にする。
おままごとが好きな子には、スプーンやフォークを配る係、食洗機のスイッチを押す係、盛り付けする係など毎日継続してやってもらいます。
こうして毎日継続してできる役割を与えることで、「責任感」が芽生えるとともに風気質の子が苦手な「継続力」も養うことができます。
風気質(多血質)の子は、大好きな人がいることで伸びる
興味や集中力が長続きしない風気質の子には無理強いは禁物です。
興味をもったからといって大人が与え続けても長続きしません。
受動的になると飽きてしまうため、子ども自身が主体的にもっと学びたい!知りたい!と思うことを伸ばしてあげることが大切です。
そのために大切なことは、大好きな人と出会うことです。
大好きな人とは恋人や異性のことではありません。
親や親戚、友達、先生など、どんなときにも頼りになる、子どもが信頼できる存在のことを指します。
基本的に「人」が大好きな風気質の子は、信頼できる人のもとにいることで愛情と共に意欲が芽生え、ぐんぐん成長します。
水のエレメント(粘液質)
水気質(粘液質)の子のマイペースを受け入れること
水気質をもつ子は、ゆっくり、まったりしています。
マイペースだと言われることが多いのもこの気質の特徴。
朝の支度や片付けなど手を出したくなる場面が多々あるかと思いますが、ここはじっと耐えて自分でやり切るまで見守ってあげてください。
水気質の子は急かされるのが苦手です。
「急いで!なんでもっと早く準備ができないの!」と叱ることは逆効果になります。
準備などに時間がかかるのであれば、いつもより余裕を持ってタイムスケジュールを組んで先回りしていくよう心がけましょう。
マイペースではありますが、ゆっくり確実に成長しています。
できないことではなく、できることに目を向けてあげてください。
焦らず、気ままに見守るマイペースさを身につけると育児が幾らか楽になります。
同年代の子どもとたくさん交流させてあげる
水気質の子は基本的に自分の好きなこと以外には無関心で、のんびりと一人遊びを好む傾向にあります。
しかし、マイペースにのんびりしたい欲求が満たされると今度は退屈になっていきます。
自分から刺激を求めにいかないので、退屈が続くと無関心になることがあります。
そのため、あまり家から出たからない子も公園や支援センターなどへ連れていき、同世代の子どもと関わる機会をつくってあげてください。
水気質の子も基本的に「人」が大好きなので、友達と遊ぶことはとてもいい刺激になります。
好きなことにはトコトン!興味を伸ばして大器晩成!
水気質の子は、好きなことはトコトンやり続けられる強みをもっています。
お気に入りのおもちゃができたらずっと遊びたくなります。
大好きなご飯のメニューは毎日でも飽きません。
毎日同じで飽きないの?と親は心配になりますが、本人は心地よくて続けていられるのです。
積み重ねることによって必ず成果が出る大器晩成型です。
水気質の子が飽きずに興味をもって続けていることは、優しく見守って継続できるようにサポートしてあげてください。
地のエレメント(ゆううつ質)
地気質(ゆううつ質)は小さな哲学者
深く考えることが得意なゆううつ質はまるで小さな哲学者です。
悲しみと向き合うことも得意な地気質の子には、ときには気が済むまで悲しみの感情に浸らせてあげることも大切です。
無理に笑わせようとしたり、賑やかな場所へ連れ出したりしては余計に殻に閉じこもってしまいます。
一人で考え込んでいるときは、自分以外の悲しい出来事や辛い出来事に触れることで「こんなに辛い人もいるんだから、私も頑張ろう。」と前向きになることができます。
そのためゆううつ質の子は、「シンデレラ」や「みにくいアヒルの子」など、苦労人や辛い思いをした主人公が幸せになるお話を好む傾向があります。
共感性がどの気質の子よりも高いため感受性も豊か。
いろいろな人のお話を聞かせてあげて、広い世界には、自分より困難な状況を乗り越えてきた人がいるということを気づかせてあげることも大切な関わりです。
繊細な心を温かく包み込む、根気強く。
繊細な心の持ち主である地の気質の子どもは、引っ込み思案で心配性な一面があります。
お友達の表情や態度から「自分は嫌われている」と勘違いしてしまったり、注意されたこともずっと気にして凹んだりしています。
ついつい「いつまでもメソメソしてないの。」と声をかけてしまうそうですが、ここはグッと堪えて子どもの気持ちにトコトン寄り添ってあげてください。
また、新しい環境や人間関係など変化が苦手なので、習い事を始めようとしても教室に入るまでに何時間もかかったり、泣き出したりします。
なだめるために「大丈夫だから。行っておいで。」と声をかけても逆効果です。
まずは「新しい場所が不安なんだね。心配だよね。」と子どもの気持ちが落ち着くまで寄り添ってあげてください。
家族が自分の気持ちを受け入れてくれると感じると、地気質の子にとって家庭は最大の安全基地となり、前を向く力になります。
感性が豊かで、芸術センスがピカイチ!
繊細な心ゆえに、感受性が豊かなのも地の気質の特徴です。
芸術家や音楽家、絶対音感の持ち主が多いのもこの気質。感覚が鋭く、耳学も得意なため語学も得意です。
得意なこと、興味のあることは存分に堪能させてあげてください。
そして絵を描くことが好きなら美術館、音楽が好きならコンサートなど地の気質の子どもの世界を広げる手助けをしてあげてください。
ディズニー映画「マイエレメント」では、
気質に応じたエレメントの性格や行動がよく表現されています。
一度見てみると理解がより深まると思います。
【まとめ】気質を知ると、子どもの気持ちが見えてくる!
気質を知ることで子どもの気持ちや行動の意味がわかり、
子育てが幾分か楽に、そして愉しくなります。
子育てにおいて大切なことは、親であるあなたが肩の力を抜いて子育てを愉しむこと。
子どもの性格は生まれもった気質です。
子どもの気質から出る言動や欲求を認めて、最大限に伸ばしてあげることで、子どもの本当の気持ちが見えてくるはずです。
ゆるく愉しく、育児をしましょう。
この記事が、親子がのびのびと成長していく手助けとなりますように。
気質やシュタイナー教育について
詳しく知りたい方はこちらの本を読んでみてね!
参考文献
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